子どもの身長について
子供の身長について悩んでいる方は多いかと思います。私は普段小児内分泌外来で低身長のお子さんを診察させてもらっているのですが簡単にまとめてみたいと思います。
医学的な定義はこんな感じになります。
<定義>
・成長障害とは成長が阻害された状態で、身長が低い場合だけではなく成長率の低下も含めた概念で、成長率が-1.5SD以下で2年以上続く場合は身長が正常範囲内であっても成長障害として扱う。
・標準身長と比較して-2SD以下、あるいは3パーセントタイル以下を低身長という。
-2SD以下の低身長は一般小児の2-3%に相当しこの中で治療対象となるのは5%以下。
この〇SDというのは成長曲線を見て判断します。
https://www.growthhormone.co.jp/
このサイトで実際に身長をいれると求めることができます。
原因ですが下記に分類されます。
<原因>
♦内分泌疾患
成長ホルモン分泌不全症(GHD)、甲状腺機能低下症、くる病など
♦症候群
Turner症候群、プラダーウィリー症候群、ヌーナン症候群、ラッセルシルバー症候群など
♦骨系統疾患
軟骨無形成症、軟骨低形成症、X連鎖性遅発性脊椎、骨端異形成症など
♦体質性低身長
SGA性低身長、家族性低身長、特発性低身長など
慢性腎不全低身長、心疾患、肝疾患、消化器疾患など
♦心理、社会的要因に伴う低身長
愛情遮断症候群、過度のスポーツ、過度の食事制限など
原因は様々ありますが外来に受診される方のほとんどの原因は体質によるものです。
ちなみにお父さん、お母さんの身長から身長の予測をすることができます。Target heightといいます。
Target height
男児:(父の身長+母の身長+13)÷2 (cm)
女児:(父の身長+母の身長-13)÷2 (cm)
Target range (Target heightの95%信頼区間)
男児:Target height±9 (cm)
女児:Target height±8 (cm)
身長は両親の遺伝的影響を受けるため予測最終身長がtarget range内に収まる低身長の場合は病的とは言えないが、逆に身長が-2SD以上であってもTarget rangeを下回る場合は何らかの疾患の可能性を考えるべき。
また子供の背を伸ばすにはどうすればよいですがと質問がよく聞かれますが基本的にはバランスの良い食事、良質な睡眠、適度な運動と答えます。
巷に背を伸ばすといっていかがわしい商品が売られていますが基本的には効かないと思っていいです。
1.カルシウム、鉄、ビタミンDを含んだサプリメント
ビタミンD欠乏性くる病では、成長障害がおこり、ビタミンDの補充により成長は正常に回復するがこれらの栄養要素の不足がない場合には、投与しても成長促進するという科学的なデータはない。特にカルシウム製剤は、骨を強くする作用はありますが、成長促進作用はなし。
2.成長ホルモンの分泌を促進するといわれている物質を含むサプリメント
代表的なものは「アルギニン」。多くの場合に200mg~2gの錠剤で、その全部が吸収されて血中に移行したとしても分泌刺激試験の10分の1ぐらいの量となり、全部がそのまま吸収されないことや代謝などを考えると、血中のアルギニン濃度はごくわずかな上昇のみ。そのためサプリメントの服用で成長ホルモンの分泌が促進はされない。
3.成長ホルモンを含むスプレー
成長ホルモンを含むスプレーでは、鼻や口の中に噴霧すると成長ホルモンが体の中に吸収されると説明されているが分子量が約2万2000というやや大きな蛋白のため、鼻や口の粘膜からはほとんど吸収されない。たとえ少し血液中に吸収されたとしても、成長ホルモンを注射したときと同じぐらいの血中濃度にするには、注射する量に比べてよほど大量の成長ホルモンを投与することが必要になるので、コストの面でも全く見合わない。
→結局はバランスよい食事、規則正しい生活習慣が大事
以上になります。
皆様からのご意見お待ちしています。